発達障害がある(といわれている) ASD 方法⑦ 感覚過敏がある
SMKのお悩みポイント対策
発達障害がある(といわれている)
ASD 方法⑦ 感覚過敏がある
(※ ADHDかASDかは絶対的な違いではありませんが、便宜上、わけて説明しています。)
・こんな傾向はありませんか?(こういうところが見られたら当てはまるかもしれない)
・〈視覚〉教科書のページをまぶしく感じたり、真ん中が黒っぽく影になって見えたりする。
・〈聴覚〉人の声やエアコン・換気扇の音が気になって集中できない。叫び声・泣き声や大きな音を極度に嫌がる。
・〈味覚〉食べ物の好き嫌いや偏食があり、給食が食べられない。
・〈嗅覚〉文房具のプラスチックの匂いをきつく感じてつらい。キャンプでのバーベキューの匂いが強すぎて耐えられない。
・〈触覚〉制服の肌触りが気になって着られない。
・説明
見落とされることが多いのですが、ASDには「感覚の特異性」があり、ある特定の感覚に敏感であったり、あるいは逆に鈍感であったりする場合があります。アメリカ精神医学会の診断基準でもようやく第5版(DSM-5、2013年)になって加わった特性であり、まだそれほど広く認識されていないかもしれませんが、軽視できない事柄です。
ここでは特に感覚過敏について取り上げます。人によって症状はまちまちですが、たとえば視覚過敏で白と黒とのコントラストを強く感じすぎてしまうような場合、教科書がギラギラしてまぶしく感じられて、読むのに努力を要するかもしれません。他の人はそうではないのですから、勉強のために余計な労力がかかり、ハンデとなってしまいます。
聴覚過敏も多くみられます。雷を怖がって泣く子がいますが、大きな音に対する嫌悪感・恐怖心が普通以上であったりします。また通常ならば無視できるレベルの騒音であっても、道路工事の脇にいるかのようにうるさく感じているかもしれません。
音を通常よりも大きく感じるというだけではなく、聞こえてくる様々な音の中から重要なものだけに注意を向けることが難しい、という場合もあります。たとえば、たいていの人は電車の中で会話することに支障はありませんが、「聞き分け能力」の問題のため、相手の声が雑音に埋もれてしまって何を言っているのかわからなかったりします。同様に、先生の声や、雑談の声、エアコンの音などがみな等しい強さで聞こえるため、授業に注意を向けるのに努力を要するかもしれません。こういった問題を突き止めるためには特別な検査が必要で、健康診断の聴覚検査では正常と判定されてしまうことが一般的です。
味覚や嗅覚、触覚の過敏も、学習には直接関係なさそうにみえますが、学校生活において陰に陽に影響を与えます。給食のメニューに食べられないものがあっても、アレルギーの診断があるわけではないので、「好き嫌いは治しなさい」と言われ、いつまでも「居残り」させられて苦痛かもしれません。あるいは、教室内に苦手な匂いがただよっていてつらいかもしれません。洋服のタグが肌に当たっているのが不快で授業に集中できないかもしれません。「わがまま」で片付けられる問題ではなく、不登校の遠因ともなりかねません。
感覚過敏は外からはわかりにくいこともあり、教育現場でまだ周知されているとはいいがたい状況です。場合によっては医師に診断書を書いてもらい、学校に提出して配慮を求める必要があるかもしれません。
感覚過敏が発生する仕組みについてはまだよくわかっていませんが、ひとつには、大脳新皮質(灰白質)、とくに前頭前野皮質の発達に「でこぼこ」があるために、古皮質や旧脳などに運ばれた感覚刺激情報がうまくコントロールされず、より直接的に伝達されてしまうためかもしれません。脳の発達とともに症状は和らぎ、成人する頃にはだいぶ楽になるということが多いようです。
これらの感覚過敏は、ある意味、人とは違った「個性」であり「特殊能力」であるとも言えます。「鬼滅の刃」という人気アニメがありますが、主人公の炭治郎は嗅覚が鋭敏で、微妙な匂いの違いで鬼を見つけ出すことができます。一緒に戦う仲間の善逸は聴覚、伊之助は触覚(体性感覚)が鋭敏です。このように、もって生まれた能力を社会のために活かすことができれば素晴らしいですね。音楽や芸術、料理など、その才能を発揮して世の中を明るく照らす光となれる可能性を秘めています。
・生徒の対策
①自分の感じ方を大切にしよう。
②他の人はどう感じているのかな。想像してみよう。
③つらいときにはお父さんお母さんや先生、まわりの人に言おう。でもいつもわかってもらえるとは限らないことも知っておこう。
④楽になれるツールがあれば積極的に使ってみよう。
・講師のサポート
①感覚過敏や感覚鈍麻がある可能性を常に考慮する。
②もし感覚過敏が疑われる場合、下記の「役に立ちそうなリソース」を試してみられたい。
③感覚の鋭さを認めてあげる。「すごく細かい違いがわかるんだね」など。
・役に立ちそうなリソース
・〈視覚〉色付きフィルター(シート):本書の「国語:読み飛ばしがある」の項でも紹介している、色のついた透明の小さなシート(商品名「魔法の定規 リーディングルーラー」など)を使うと、白黒のコントラストを和らげて、かなり楽に読めるようになります。いつも使える状況とは限りませんが、使えるときだけでも使うと疲労を軽減できると思います。人によって合う色が違うので、各色を試してみるとよいでしょう。
・〈視覚〉メガネの色つきレンズ:メガネのレンズに色がついている高機能のものがあります。目から入力される光の調整に役立ちます。眼科医院や専門の眼鏡店で調製してもらう必要があります。
・〈聴覚〉イヤーマフ、耳栓:聴覚過敏の方々や、騒音下で仕事をする人のためのイヤーマフや耳栓が市販されています。授業中には使えませんが、自習のときなどに活用できます。イヤーマフはヘッドホンのような形をしているものです。触覚過敏ももっていると、イヤーマフや耳栓が肌に当たる部分に不快を感じるかもしれません。たくさんの種類が出ているので、自分に合うものを見つけられるとよいと思います。
・〈聴覚〉ノイズキャンセリング・ヘッドホン、デジタル耳栓:やや高価ではありますが、ハイテクを使ったツールです。ノイズキャンセリング・ヘッドホンとは外部からのノイズを低減して音楽などを聞こえやすくする機能がついたヘッドホンです。安全のため、人の声の周波数は低減率が低く、聞こえやすくなっています。音楽をかけずに単独で使えば、ほぼ無音の静寂が得られて快適です。デジタル耳栓も同様の技術を用いた耳栓です。いずれも遮蔽率を変えたりできるものがあります。ただしこれも遮蔽のために装着の圧迫が強い場合があり、触覚過敏もある人は注意が必要です。
・〈聴覚〉音楽でマスキング:授業中には難しいのですが、エアコンや換気扇、パソコンのハム音などが気になる場合、音楽をかけるとマスキング(隠すこと)ができていいかもしれません。ノイズキャンセリング・ヘッドホンで聞けばほとんど全く気にならなくなります。
・〈触覚〉タグ無しの衣服など:衣服についているタグが肌に当たって不快であるという人のために、最近はタグのかわりに衣服に直接印刷されているものが出ています。また素材によってはチクチクして不快だと感じる人は多いため、肌触りに配慮した製品も出ています。
・〈触覚〉硬筆用下敷き:本書の「反復練習が苦手である」の項でも紹介していますが、鉛筆やボールペンで書くときに書きやすいように表面を加工した下敷きが市販されています。書き心地がよく、字もきれいに書けます。学習意欲の亢進に役立ちます。
愛知東邦大学 人間健康学部 教授 松尾香弥子
SMK 薄井晶
「方法が、ある」SMK
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