WISC 生徒の対策と講師のサポート ⑰ WMIだけ低い
WISC 生徒の対策と講師のサポート
⑰ WMIだけ低い
〇前回までのおさらい
方法①~⑪までは、WISC-Ⅳ検査の概論、FSIQや各指標がどのような“知能”を推定しているのか、さらには、指標同士の関係性を解説してきました。ここからは、事例(架空)をもとに、WISC-Ⅳ検査結果から推測される“知能”の特徴が、日常の困り事といかに繋がっているのか検討し、具体的な対策・心がけ等を提示していきます。
〇こんな傾向はありませんか?(こういうところが見られたらあてはまるかもしれない)
【事例Wさんの場合】
高校生になったばかりのWさんは、最近“忘れっぽい”ことで悩んでいるようです。教科書・ノートなどの忘れ物はしょっちゅうで、財布やスマホもどこに置いたのか、探し回ることも少なくないようです。また、通学には電車を使っているのですが、乗りたい電車をどうしても1本逃してしまい、5~10分の遅刻も増えてきているようです。
〇WISC-Ⅳ検査を受けたところ・・・
WISC-Ⅳ結果 Wさんのプロフィール
全検査IQ(FSIQ)は「平均」を示しています。4指標も、言語理解(VCI)・知覚推理(PRI)・処理速度(PSI)は、概ね「平均」域にあたりますが、ワーキングメモリー(WMI)はこれらを下回り、「平均の下」に位置しています。
よって、このプロフィールから、周囲の同級生と比較した場合、概ね周囲に引けを取らない知的能力を有しているが、ワーキングメモリー(WMI)のみ不得手であると推測できます。
加えて、“個人の中での能力差”に注目すると、言語理解(VCI)・知覚推理(PRI)・処理速度(PSI)>ワーキングメモリー(WMI)間で、比較的大きな差があるため、いわゆる“生活のしづらさ”を感じやすいと指摘できるでしょう。
〇生徒の対策
①反復学習を意識しよう!
新しく挑戦すること、不慣れなことは、どうしても戸惑いやすく、なかなかうまくはいかないものです。そもそも最初からうまくいく、なんてことは誰しも難しいことです。最初は難しくとも、繰り返すうちにちょっとしたコツを掴んだり、気がつくと慣れていたりするものです。不慣れを慣れに変えるには、反復することを諦めない、これに尽きるのかもしれませんね。
②覚えることと“書くこと”はセットで!
耳で聞いただけでは、どうしても記憶に残りづらくあるでしょう。また、頭の中で「次はこうしてみよう」、「今度は間違えないように」と思っていても、場面が変わると、頭の中もリセットされがちです。普段から、“抜け漏れ”を防ぐためには、後に目で確認できるようにしておくことが最も重要です。覚えておかなければならないこと=書き留めることと、徹底しておく必要があるように思います。
③あなただけのルーティンを見つけてみよう!
どんなに些細なことでも構いませんので、毎日何かひとつだけでも決まったことに取り組んでみましょう。例えば、朝起きたらまずカーテンを開ける、通学時の電車は〇号車に乗る、夜寝る前に1行日記を書く等々。きっちりできなくとも、たとえ三日坊主になったとしても構いません、ゆるく長く、もう一回挑戦してみることです。きっとそうやって私たちの毎日は続いていくはずです。
〇講師のサポート
①反復学習に馴染めるように!
相対的にWMIが低くある場合、“注意集中のコントロール”に難しさがあると考えられます。目の前の刺激にのみ注意を向け続けることが、思うようにできないため、同じことを同じように繰り返すことにも支障が出やすくあります。生徒本人の努力だけでは、反復することに馴染みづらくあるため、周囲が「もう一度挑戦してみよう」と促したり、「前回は○○、今回も○○」などと、関連付けてあげるような声掛けも必要かと思います。
②聴覚情報は、なるべく視覚情報とセットで提示を!
生徒の対策②で示した通り、やはり耳で聞いただけの情報は、記憶に残りづらくあります。宿題の範囲や、次はいつ何時に塾に行くのかの約束など、はじめのうちは、講師側がメモして渡してあげても良いかもしれません。そのうちだんだんと自分で決まった場所にメモをとってもらう、それを講師が確認すると、習慣化するためのステップを踏めるとより良いでしょう。
③周囲の環境づくりに配慮を!
方法④「WMIとは?」の回でも触れていますが、WMIは時間感覚の発達とも関連があるとされています。WMIが相対的に低くある場合、どうしても“たった今”の情動に左右されやすいとされ、ここを自らの心掛けだけでコントロールするのは、なかなか難しいと考えられています。したがって、なるべくその他の刺激が少ない環境づくりを、周囲が配慮してあげる必要があります。周囲は基本的に“変わらない”、常に“一定であること”は、生徒本人の安心感につながることでしょう。
臨床心理士・公認心理師 堤 梨乃
SMK 薄井 晶
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