WISC 生徒の対策と講師のサポート ⑮ PSIだけ高い
WISC 生徒の対策と講師のサポート
⑮ PSIだけ高い
〇前回までのおさらい
方法①~⑪までは、WISC-Ⅳ検査の概論、FSIQや各指標がどのような“知能”を推定しているのか、さらには、指標同士の関係性を解説してきました。ここからは、事例(架空)をもとに、WISC-Ⅳ検査結果から推測される“知能”の特徴が、日常の困り事といかに繋がっているのか検討し、具体的な対策・心がけ等を提示していきます。
〇こんな傾向はありませんか?(こういうところが見られたらあてはまるかもしれない)
【事例Oさんの場合】
明るくハキハキと、物怖じしない性格のOさんは、今年初めて学校行事のリーダーを任されることになりました。クラスでどんな出し物を行うか、まずはアイディアを出そうと話し合ったのですが、Oさんはいい案が思いつかず、結局は副リーダーの案が採用されることに決まりました。少し落ち込んでしまったOさんですが、これまでのことを振り返ると、ある程度やり方が決まっているものは、素早く実行に移せるものの、1からアイディアを出すことはいくらか苦手なのかもしれない、との気づきがあったようです。
〇WISC-Ⅳ検査を受けたところ・・・
WISC-Ⅳ結果 Oさんのプロフィール
全検査IQ(FSIQ)は「平均」を示しています。4指標も、言語理解(VCI)・知覚推理(PRI)・ワーキングメモリー(WMI)は、概ね「平均」域にあたりますが、処理速度(PSI)はこれらを上回り、「平均の上」に位置しています。
つまり、このプロフィールから、周囲の同級生と比較した場合、Oさんは処理速度(PSI)に長けており、その他の力も概ね引けを取らない程度に有していることが推測できます。
ただし、ここで注目すべきは、“個人の中での能力差”です。すべての指標が、同年代の平均以上を示していたとしても、個人内での指標間差が大きくなっている場合、いわゆる“生活のしづらさ”を感じやすいと考えられています。
したがって、Fさんの例では、処理速度(PSI)>言語理解(VCI)・知覚推理(PRI)・ワーキングメモリー(WMI)の間で、比較的大きな差があるために、すでに決まったルールやペースがある課題は素早く処理できる一方、1からアイディアを出したり、応用・工夫を凝らしたりすることは苦手に感じやすいと考えられます。
〇生徒の対策
①学習のスケジュールは、あらかじめ目に見える形で準備しておこう!
基本的に学校内では、1時間目、2時間目…と、タイムスケジュールが明確に定められていますね。おそらく、この“時間割”のように、次に何をすべきかが具体的に、目に見える形で示されているほうが、身動きを取りやすくなるように思います。学校から帰ったあとの自室での過ごし方、あるいは休みの日の過ごし方を、一度書き出してみても良いかもしれません。
②自分なりのスケジュールを、“ルーティン”化してみよう!
①で決めたタイムスケジュールは、できる限り繰り返し実践してみましょう。だんだんとご自身にフィットしたやり方が洗練され、いつの間にか当たり前の習慣になれば、“勉強する”こと自体が苦ではなくなるかもしれません。(ちなみに、勉強に向かうことをルーティン化するコツとして、すでにある当たり前の習慣の間に取り込んでみると良いかもしれません。例えば、「ご飯を食べたあとに歯を磨く」こと、この間、つまりは、「ご飯を食べたあとは、いったん机に座って、テキストを開いてみる、その後で歯を磨く」などといった具合です。)
③あともう1回だけ見直す習慣づけを!
PSIが相対的に高い場合、思考は次へ次へと進もうとし、これまでを振り返って考え直そうといった試みはいくらか少ないかもしれません。そのため、何かしらの作業を終わらせることは早くとも、抜け漏れが生じやすかったりもするでしょう。これを防ぐためには、あともう1度だけで構いませんので、見直し・確認することを意識しましょう。
〇講師のサポート
①学習のスケジュールは、目に見える形での共有を!
次に何をすべきか、先の見通しをわかりやすい形で共有しておくことがより良いでしょう。このとき、生徒の対策①に示した通り、生徒自身が書き出したスケジュールを尊重しつつも、ある程度講師側で枠組みを決めてあげたほうが取り組みやすくなるかもしれません。
②基本的には、同じルール・ペースで!
相対的にPSIが高くある場合、“ルーティン”にこそ適応があると考えられます。決まった一定のルール・ペースに従い、手順通りにやりこなせることで、生徒の安心感や自信にもつながるように思います。
③作業の“量”のみを評価するのではなく、作業の“質”の重要性も!
もしかすると「宿題などは、とにかく早く終わらせれば良い」と考え、スピードのみを重視してしまう生徒も少なからずいるように思います。作業の“量”で成果を測ること自体は否定しないものの、一般社会では、同時に作業の“質”も担保しなければならないことを、諭していく必要もあるのかもしれません。
臨床心理士・公認心理師 堤 梨乃
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