WISC 生徒の対策と講師のサポート ③ 知覚推理指標(PRI)が弱点
WISC 生徒の対策と講師のサポート ③ 知覚推理指標(PRI)が弱点
知覚推理指標(PRI)が弱点
(=PRIが低いこと、つまり平均以下にあたる場合を想定しています。)
〇こんな傾向はありませんか?(こういうところが見られたら当てはまるかもしれない)
・臨機応変な判断・対処が苦手
・いわゆる“空気が読めない”ところがある
・先の見通しが持ちづらい
〇説明
【前回までのおさらい】
WISC-Ⅳとは、知能検査のひとつであり、全検査IQ(FSIQ)から、全体的な知的能力の水準を推定します。FSIQの算出には、特定の知的能力を示す4つの指標(=言語理解指標(VCI)・知覚推理指標(PRI)・ワーキングメモリー指標(WMI)・処理速度指標(PSI))が用いられます。
今回は、この4指標のうち『知覚推理指標(PRI)』について、詳しく説明していきます。
【知覚推理指標(PRI)とは?】
私たちは、外の世界からさまざまな刺激を受け取り、そこに何かしらの“意味づけ”をしながら日常を過ごしています。例えば、道を歩いているとき、目の前に大きな石が落ちていたとしましょう。このときAさんは「大きな石だ。動かせそうにないな」と、“意味づけ”をした場合、石を避けて道の脇を通るという行動を選択するでしょう。このような“意味づけ”の過程を知覚と呼びます。
さきほどと同じ状況であっても、Bさんは「大きな石だ。これくらいなら乗り越えよう」と、知覚した場合、石自体を乗り越えて通るという行動を選択するかもしれません。つまり、受け取った刺激は同じであっても、人によって“意味づけ”の過程が微妙に異なるため、選択する行動にも違いが生まれるのです。
では、この例の場合、どのように知覚すると、正しい選択につながるのでしょうか。もしも道の幅が狭く、脇を通る隙間すらなさそうな場合は、Bさんの方がより良い選択かもしれません。一方、もしも石がもろく今にも崩れてしまいそうな場合は、Aさんの方がより良い選択かもしれません。加えて、Bさんは石を登る際、ケガをする可能性もあるかもしれませんね。正しい選択をするためには、受け取った刺激だけでなく、周囲の状況も把握し、その先の展開なども含めて、さまざまに推理をする必要があるといえるでしょう。
総じて、知覚推理指標(PRI)とは、受け取った刺激を正しく認識する力だけでなく、それをもとに、より良い方法を考えたり、新しいアイディアを導き出したりする力を推定しているのです。
【PRIが苦手とは?】
知覚推理指標(PRI)の評価も、FSIQやVCIと同じく、PRI:90~110を同年代の「平均」とし、その高低から得意・不得意を推測します。
このPRIが平均を下回っている場合、新しい場面での課題解決につまずきやすいことが考えられます。例えば、初めて通る道で迷ったり、人の顔色がなかなか読めなかったりもするかもしれません。予期せぬハプニングで動揺しやすく、突拍子もない行動をとってしまう可能性も予想されます。
【注意点】
PRIが対象とする刺激は、基本的に“視覚”です。そのため、PRI=見る力などと言われることもあります。
見る力を補う上で、一般には、聞く力、つまり“聴覚”に働きかけることが望ましいと考えられています。人の五感の割合としても、視覚:80%、聴覚:10%と、その差は大きくありますが、視覚に次ぐのが聴覚であると、さまざまな研究によって示されています。
もちろん聞く力を育てることも有効でしょうし、必要なことでしょう。ただ、あくまでも筆者の経験則ではありますが、“触覚”に働きかけることがより望ましいように思います。実際に触れること、実体験こそがPRIを育む術であるだろうと感じます。
〇生徒の対策
①見本の真似をしてみよう!
そもそも勉強の仕方がわからない…と悩んでいる方、少なくないように思います。そういった方は、迷わず誰か・何かの真似をすることをお勧めします。例えば、黒板に書かれたことは、そっくりそのままノートに書き写す。先生が線を引いたら、同じく線を引き、赤や黄色で書いたら、同じ色を使ってみましょう。勉強が得意な友だちのノートを借りて、書き方を真似てみるのもひとつの方法かもしれません。
心理学には、“モデリング”という言葉があります。これは、憧れの対象に少しでも近づくため、その対象の仕草やファッションを真似ることを指す言葉ですが、学習にも応用できると言われています。何事も理想に近づくためには、真似ることからはじめてみましょう。
②見通しがつかなければ、メモに書き出してみよう。
何をどういう手順で行えばよいかわからないときには、自分でよくわかる言葉で、メモに書いておきます。とっさの判断がつきにくいときに、都度参照します。
③ゴールを見定めて!
状況をどう認知し、どうその後の展開を推理するか、迷うことがたくさんあると思います。最初から「これを求めるんだ」「これを探し出すんだ」というゴールを最初に見定めてから、そのためには・・・と逆算して考えていくと、次の一歩が進みやすいです!図形の問題などに非常に有効です。
〇講師のサポート
①なるべく実物を提示するように!
上述した通り、見る力を補う上で、実際に触れて体験することが有効であるように考えます。立体の展開図を学ぶ場面が最もイメージしやすいかと思います。展開図のみを平面上で提示するより、立体に実際触れながら、その原理を理解してもらうほうが、一般的にもわかりやすくなるでしょう。想像力を実像で補ってあげる作業といえるかもしれません。
②点と点を繋いであげるような声かけを!
PRIの苦手さは、応用することの苦手さと言えます。一度経験したことが、次の経験につながりづらいところに生活のしづらさがあるともいえるでしょう。今向き合っている問題が、以前に経験した問題に似ていることに気づいてもらえるよう、「これは〇〇に似てるね」、「どこかで××な問題解いたね」などといった声かけが望ましいように思います。
③言葉のやり取りを大切にしましょう!
「自分で見て何とかして」というスタイルでは難しい傾向があります。言葉でやり取りして一つずつ理解・納得しながら進んでいきます。
臨床心理士・公認心理師 堤 梨乃
SMK 薄井 晶
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